ノンフィクション北朝鮮暴露本の「凍土の共和国」
1960年代に理想の社会主義国を建設するために日本から北朝鮮に渡った兄妹に再会するため、1980年代に朝鮮総連の事業で北朝鮮に1ヶ月過ごしたおじさんのガッカリを暴露した本。
著者名が仮名なのもリアリティすごい。やっぱり家族が収容所とか山間部の名にもないところに送られちゃうかもしれないから…。
まず、1984年にこの本を出せたのがすごい。
1960年代くらいから南北朝鮮どちらもほぼほぼ情報が入ってきてなかったけど、うすうす北朝鮮はヤバイんじゃないか、いや、南朝鮮の方が
…みたいな噂はあったらしい。
1980年代になってもまだ家族を人質にとられるから内情がはっきり外に出てなかったのに、なのにこの本が出せたのはヤバイ。
外の脱北本も同じようなことを書いてるからだいたいが事実っぽい。
しかもその事実がジョージオーウェルの1984(この本が1984年出版なのウケる)とかよりもディストピア小説なのがおもろい。現実は小説より奇なり。おもろいなんていってはいけないが…。
盗聴、密告、身分制、管理社会。
国全体が日本からの外貨が頼りなのに、日本から送金があったり仕送りがあったりする日本からの朝鮮人移民(帰胞というらしい)への現地民からの妬みもすごいし、一部の金持ち以外の帰胞は地位がめちゃめちゃ低くてかなり生きていくのが大変そうだった。
帰胞が、日本からもっと物資を寄越すようにと会いに来た親族を説得していたシーンが胸糞悪かった。より良い生活をエサに政府役人から説得を促されていたらしい。家族を使って脅したりがめようとしたりそういった胸糞悪さ。
金が物を言う、身分が物を言う、言論は弾圧、外貨で偉い人はいい暮らして典型的な失敗社会主義国のくせに腐った資本主義とか…も~。
「地上の楽園」と冠したディストピアの、権威主義の宗教国家みたいな感じだね。本の世界のようだ…。
金が物を言うのは、少し、というか状況がかなり違うもののカザフスタンの賄賂について書いてある「賄賂のある暮らし」という本も元社会主義国で同じ匂いを感じとることの出来る本でした。やっぱ社会主義って理想だけ立派で現実はダメだね…。